2004年05月13日
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「錆びるマン」執筆メモと、Winny開発者逮捕事件との関係

Written By: 遠野秋彦連絡先

 拙作小説、戦え! 錆びるマン!!について、若干のメモを残しておく。

 この作品の成立には2つの要因が存在している。

 1つは、「錆びるマン」という名前を気に入っていたことである。何か、この名前を使って小説を書けないか、ということは、ずっと考えていた。しかし、錆びるヒーローは今ひとつイメージしにくい。表面が錆びることによって、それが逆にそれ以上の錆を防ぐ防御壁の働きをする、といったアイデアも考えたのだが、強い変身ヒーローを格好良く描くのは全く趣味ではないので、イマイチ採用しにくいアイデアであった。

 もう1つの要因は、Winny開発者逮捕という事件の波紋にある。この事件そのものではなく、その報道を受容する側の者達、インターネット上に散見されるニュースへのリアクションの「混乱」「ぬるさ」「煮え切らなさ」「それらの特徴への自覚の無さ」などが目立ち、これを題材にした話を書くのも面白いかと思った。しかし、事実関係の把握もできておらず、マスコミ報道が事実かも分からず、Winny関連サイトの閉鎖が相次ぐ中で確認のためにアクセスすることもできず、これに取り組むのは困難かと思った。

 しかし、この2つの要因の交点に作品を生み出しうるというアイデアを得てから、「戦え! 錆びるマン!!」は生まれ出ることになった。

 そのような経緯であるから、この小説がWinny開発者逮捕という事件が無ければ生まれ出ることはなかったことは事実であるが、この事件を架空世界を舞台に描き直した作品というわけではない。たとえば、SABIRU開発者アイアン・コーがWinny開発者、と言うわけではない。あくまで、錆びるマンという作品の持つ要請によって、人物とストーリーが構成されている。